都合が悪いから言わない、を選ばない|トレード指導で大切にしていること

都合が悪いから言わない、を選ばない|トレード指導で大切にしていること

ある生徒さんの話です。

『本気で専業を目指しています』

その言葉で、指導を引き受けたことがあります。

最初は順調でした。学ぶ姿勢もあったし、やり取りも噛み合っていました。

ただ、しばらく経った頃に月次の報告を受けて、手が止まりました。

ギャンブルのような売買を繰り返していた。資金管理が完全に崩れていた。

本人もそれを自覚していて、『中毒状態に陥っていた』と表現していました。

『言葉だけでは何も変わらない』

その後のやり取りの中で、ロットを最小に落とすという話がありました。

そのとき、自分はこう返しました。

『今のままでは、言葉だけでは何も変わらない』

お互いにとって耳心地が良い内容ではありませんでした。

でも、その時の正直な見立てでした。

報告されたトレードを見返すと、ポジションを持ちすぎている。負けた後にロットを上げ、取り返そうとしている。

問題は、単純にロットの数字だけではありませんでした。

一度ロットを落としたとしても、その行動が起きるところまで含めて見直さなければ、また同じ状態へ戻る可能性があります。

だから、『次からロットを下げます』という言葉だけでは足りないと感じました。

すぐには送らなかった

翌朝、どう伝えるかを考えました。

すぐには送りませんでした。

昼になって、長いメッセージを書きました。

書き始めは、生徒さんの問題を指摘することではなく、まず自分の側の不備を正すところからでした。

伝え方に誤りがあったこと。

指導を続けていたにもかかわらず、ここまで状態が崩れていることに気づけていなかったこと。

そこを先に謝ってから、本題に入りました。

『正直に言いますけど、とてもそのようなお姿は僕の目には映りませんでした』

『もちろん努力されていると思います。それは理解しています』

『しかし、今のままの状態が続くなら、これ以上は僕の手には負えないと思いました』

相手を否定したかったわけではありません。

自分に今どう見えているのかを、曖昧にせず伝える必要があると思いました。

『自分自身の内面の問題だからです』

返信は4分後に来ました。

その中に、印象に残っている言葉があります。

『僕の手に負えない、これはその通りです。なぜなら自分自身の内面の問題だからです。他人がどうこうできる問題ではありません』

そして、

『自己改革しようと必死です』

とも書かれていました。

その通りだと思います。

指導する側が、本人の代わりにトレードすることはできません。

ロットを上げたくなったときに、代わりに止まることもできない。

ポジションを持たないという判断を、本人の代わりにすることもできません。

最終的に自分の判断を変えていくのは、本人です。

ただ、本人からは見えていないズレを伝えることはできます。

自分にも見えていなかった

報告されたトレードを改めて見返すと、パターンがはっきり見えていました。

ポジションを持ちすぎる。

負ける。

ロットを上げて取り返そうとする。

判断がさらに崩れる。

そこで、自分はこう伝えました。

『暴走癖があるとは知りませんでした』

これも正直な言葉でした。

同時に、指導を続けてきた自分にも、そこまでの状態になっていることが見えていなかった。

相手へ伝えたことで、自分自身にも見えていなかったものが見えた場面でした。

結果として、その方はもう一度やり直すことを選びました。

黙っていた方が楽だった

あのとき黙っていたら、もっと楽だったと思います。

相手も傷つかなかったかもしれない。

自分も嫌な役を引き受けなくて済んだ。

ただ、飲み込んでしまったら、相手はそのズレを受け取れません。

受け取れなければ、本人の判断が変わるきっかけも生まれない。

そのまま続けば、最終的にはもっと辛くなる可能性があると感じていました。

だから書きました。

何を言うかと同じくらい、どう伝えるか

ただし、何を言うかと同じくらい、『どう伝えるか』は大事だと思っています。

こちらの見方が、いつも正しいとは限りません。

本人にしか分からない事情もあります。

だから、

『あなたはこういう人間だ』

と決めつけるのではなく、

『自分には、今こう見えている』

という形で伝える必要があります。

あのメッセージを、自分の側の不備を正すところから始めたのも、そのためです。

指導する側だからといって、自分だけを正しい側に置きたくありません。

見落としていたことがあれば、それも認める。

そのうえで、今見えている問題は伝える。

それが必要だと思っています。

今でも、あの判断が正しかったとは言い切れない

あの判断が正しかったのかどうか。

今でも、完全な確信はありません。

もっと別の伝え方があったかもしれない。

もう少し早く気づくべきだったのかもしれない。

伝えるタイミングも、他にあったかもしれません。

ただ、飲み込まなかったこと自体は、間違っていなかったと思っています。

これは、『厳しいことを言えば人は変わる』という話ではありません。

厳しく言うこと自体に価値があるとも思っていません。

必要なことが見えているのに、自分が嫌われたくない、揉めたくないという理由で言わない。

それだけは選びたくないという話です。

都合が悪いから言わない、を選ばない

指導を続けていく中で、変えたくないことが一つあります。

『都合が悪いから言わない、という選択を取らないこと』

それは、自分にとって無責任な行動になってしまうからです。

お陰様で、その方とは今も関係が続いています。今年からは専業となり活動もしています。

厳しいことを伝えたから信頼関係ができた、と単純に考えているわけではありません。

ただ、あのときお互いに問題から逃げずに向き合ったことは、その後の関係につながっていると感じています。

技術を教えることはできます。

でも、その技術をどう使っているのか。

どこで判断が崩れているのか。

本人には見えていないものがないか。

そこまで見て、必要なことを伝える。

自分は、そういう指導を続けたいと思っています。

この実話の背景にある考え方

今回の話は、単に一人の生徒さんとのやり取りについて書きたかったわけではありません。

指導を続ける中で感じている、

『技術を教えるだけでは、人の判断は変わらない』

という問題ともつながっています。

なぜ知識を持っていても行動が変わらないのか。

なぜ自分のトレードを確認し、判断を言葉にする必要があるのか。

その背景については、こちらの記事で整理しています。

技術だけでは、人は変わらない|知識を判断へ変えるために必要なこと

そのうえで、実際のトレード記録や判断をどのように確認しているのか、個別添削を含む指導内容を知りたい方は、トレードマスターコースの内容を確認してください。

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