FEP(自由エネルギー原理)で紐解く、衝動的エントリーが生まれる理由

FEP(自由エネルギー原理)で紐解く、衝動的エントリーが生まれる理由

『チャートを自分に合わせようとしていないか』
能動的推論(自ら動いてズレを埋める働き)と、職人の「待つ」作法

なぜ、手を出してしまうのか

「まだラインに届いていない。でも、勢いがあるからこのまま行くだろう」

そう自分に言い聞かせてエントリーボタンを押した数分後、チャートは無情にも逆行を始める。
後から振り返れば、「なぜあの半端な位置で?」と首をかしげるような場所で。
多くのトレーダーがこの現象に苦しみ、「自分は意志が弱い」「ポジポジ病だ」と自らを責めます。

しかしこれは性格が未熟だから起きるのではなく、人間が本来持っている『不確実な世界を生き抜くための機能』が、相場という特殊な環境で過剰に反応している——そういう見方もできるかもしれません。

FEPの視点:脳は「曖昧さ」を嫌う

FEP(自由エネルギー原理)という理論を参考にすると、私たちの行動の背景に興味深いメカニズムが浮かび上がります。
この理論によれば、脳は常に「次に何が起こるか」を予測していると考えられています。

そして、予測と現実が食い違ったとき、脳は『予測誤差(よそくごさ)』——つまり「思った通りにならなかった時の驚きや不快感」——を感じます。
この不快な誤差を解消するために、私たちには『能動的推論(のうどうてきすいろん)』という機能が備わっているとされています。これは、「予測に合わせて現実を変えようと行動する働き」のことです。
例えば、空腹(予測とのズレ)を感じたら、食事をする(行動)。これでズレは解消されます。

これは正しい生存戦略です。

しかし、トレードではどうでしょうか。
「上がるはずだ(強い予測)」を持っている時に、チャートがなかなか動かない(現実)。

この時、脳内で生じる「思い通りにいかない不快感」を解消するために、『ポジションを持つ』という行動を起こしてしまう——そういう可能性があります。
つまり、エントリーすることで「私は相場に参加している(予測が進行している)」という既成事実を作り、無理やり脳の中の居心地の悪さを鎮めようとしている。

あの不可解な衝動は、脳が不安を鎮めようとする、あまりに人間的な防衛反応だと説明することも可能かと思います。

「反応」から「作法」へ

では、私たちはこの本能とどう付き合えばよいのでしょうか。
本能的な「反応」としての行動を、職人が道具を扱うような、理性的で静かな「作法」へと昇華させる必要があります。

56スパルタンFXでお伝えしている技術は、この「脳の焦り」に打ち勝つための、具体的な手立てでもあります。

「確定足」で事実だけを追いかける

相場が動いている最中にローソク足をいつまでも見ていても、脳の「早く動け」という指令を刺激するだけです。
特にトレンド転換の局面などは、少しの戻りでも「上に行きそう」に見えてしまいがちです。
ここで有効なのが、『終値で判定する』という鉄の掟です。

ヒゲで戻されるのか、実体で抜けるのか。
その事実が確定するまでは「相場はまだ答えを出していない」と定義します。

「待つ」のではありません。『判定の時間を決める』のです。

仮に4時間足でセットするなら、

  1. 4時間足の確定まで、あと何分あるかを確認する
  2. スマホでも何でも良いのでタイマーを使うのもあり
  3. その間は、チャートを最小化するか、別の作業に移る
  4. タイマーが鳴ったら、確定したローソク足を見る
  5. 「実体で抜けたか」「ヒゲで戻されたか」だけを見て判定する

それまでは、たとえ何が起きようとも、そのローソク足は「未完成」です。
そう割り切ることで、脳の過剰な予測を落ち着かせることが出来ます。

「魔の5波目」を追いかけない

私たちの脳は、パターンを見つけると「次も同じことが起きる」と過信しがちです。
しかし、相場には『逆張りの5波目』のように、非常に複雑で狩られやすい局面が存在します。
(参照:https://56spartanfx.com/counter-trend-5th-wave-risk/

1波、2波、3波ときれいに動いた後、「4波戻しからの5波目」を狙いたくなりますが、ここは多くのトレーダーが損切りに遭う場所です。
「形が崩れている」「チャネルを抜けた」といった違和感があるなら、それは脳が発している『精度(プレシジョン)』——つまり「情報の信頼度」——の低下サインかもしれません。

無理に予測を当てはめようとせず、「ここは私の仕事場ではない」と見送る。
この「何もしない」という選択こそが、最も高度な能動的推論——つまり、長期的な生存確率を高める行動とも言えます。

「待ったらチャンスを逃すのでは?」

「でも、確定足を待っていたら、勢いのある波に乗り遅れるのでは?」

そう思う気持ちはよくわかります。
しかし、考えてみてください。

『MAトレンド押し』のような鉄板パターンは、我々が無理に動かなくても、相場の方から形を整えてやってきます。

形が整うまで待てば、必ず来ます。

逆に、「待てなかったから逃した」と感じる波は、おそらく最初からあなたの波ではなかったのです。
職人は、素材が良くなければ刃物を当てません。それと同じです。

時に心がざわついたのなら

チャートに向かった時、もし「早く入りたい」という衝動が胸に湧いたら、

「私は今、チャートの事実を見ているか? それとも、自分の不安を消すためにボタンを押そうとしていないか?」

と自分に問いてみてください。
焦る必要はありません。

ローソク足が一本、静かに確定するのを見届ける。
その一瞬の「間」を持てるかどうかが、ギャンブラーとトレーダーを分ける分水嶺になるはずです。

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