トレーダーアセスメント:『感情』に対してエントリーしていないか?

自由エネルギー原理 56のブログ

 

直近で0勝20敗 多い月は90回もエントリーしてた受講者さん

トレードが伸びない時、原因を手法に求める人は多いです。
しかし現場で起きている問題は、もっと根が深いのが実情。

努力しているのに勝てない。
検証しているのに安定しない。

この状態で手法を増やすと、むしろ悪化する可能性が高い。
問題が手法ではなく『解釈と反応の癖』にあるからです。
だから私はここに踏み込む必要を感じています。

目的は『勝つ手法探し』ではなく、
『負けが増える構造を止め、負けない行動を定着させること』

今回は重度のポジポジ病に悩む受講者さんに行っている、
脳科学・自由エネルギー原理(FEP)の知見に基づいた、
トレーダーアセスメントをご紹介いたします。


まず“脳の癖”と“予測誤差”を言語化する

今月で指導累計170名を超えましたが、私はその経験を通じて、
『トレーダー自体を分析する力』が養われたと思っています。

トレーダーが伸び悩む原因は、
努力不足や知識の欠落だけではありません。

多くのケースは知識の正しい使い方や、
努力の方向性を間違えて遠回りをしています。
私はそれに対してテクニカル分析や
トレーダーとしての規律で指導を行ってきました。

しかし今年に入りFEPを学ぶ機会に恵まれたお陰で、その知見を活用し、
トレーダーの持つ『脳の癖』に対する具体的な言語化や、
行動変容に向けた対応策を立てれるようになりました。

まず最初にトレード報告とヒアリングを“診断データ”として扱う。
ここで探すのは次の因果で、
『何を見て、どう解釈し、何を予測し、どこで外れ、どう反応したか』
この“外れ”が『予測誤差』です。

誤差が大きいほど、不快感が増える。
不快感が強いほど、行動が短絡する。
結果として、

  • ルールの拡張解釈
  • 損切り直後の反射エントリー
  • 取り返し目的のロット変動が起きやすくなる。

私は受講者さんの負け方を、現象ではなく構造で説明します。
ここが言語化できた時点で、改善はすでに始まっていると言えます。

そしてその一連の流れをFEP言語だけに頼ることなく、
あくまでもトレーダー視点の言葉に置き換えて言語化していきます。

FEPの知見で介入仮説を共同構築する

次に私は、株式会社Lyapunov代表・富永晃輝氏へ現状を共有し、

受講者さんの状態に即した対策を共同で構築します。
狙いは“精神論の強化”ではなく、
『認知・期待・行動環境』の3点を同時に整えることです。

具体的には、

  • どの誤差が最も大きいのか
  • 誤差を小さくする“期待の置き方”は何か
  • 誤差が出た瞬間に逸脱しない『具体的な行動』は何かを抽出し、
    トレード文脈へ翻訳します。

ここで初めて、
『この人が守れるルール』
『この人に必要な制限』
『この人の回復手順』
が一枚の設計図となっていきます。

受講者さんの希望を尊重しつつ『行動変容のロードマップ』を提示する

どれだけ正しい対策でも、本人が自分の物語として受け取れなければ習慣は変わりません。

私は受講者さんの希望を尊重します。
しかし同時に、現在地の厳しさも曖昧にしない。
この両立を可能にするのがアセスメントです。

  1. 今のあなたに起きていること
  2. 放置すると起きること
  3. 変えたら得られる未来
  4. そのための段階手順

ここで最も重要なのは
“やること”より“やらないこと”。
ルールは増やすほど守れない。
削るほど守れる。

この合意ができた瞬間、
受講者さんの努力は“正しい方向”に揃い始めます。

定期フィードバックで“新しい反応”を固定する

最後は地味な行動と継続です。
しかし最も結果を変える工程とも言えます。

脳の癖は“理解”では変わらない。
変わるのは“成功体験の蓄積”です。
だから私は、定期的なフィードバックで改善を反復します。

その積み重ねが、
“予測誤差に飲まれない新しい自分”を作るからです。

まとめ

私のアプローチは手法の追加ではなく、
『診断→共同設計→合意形成→反復改善』の設計です。
受講者さんが最後に手に入れるのは
『負けない行動が自然に選べる状態』です。

今回、冒頭に記載した受講者さんは、このトレーダーアセスメントを実践中です。
彼に起こる変化を楽しみにしながら、ご報告出来る日を共に実現していきます。